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甘い線

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甘い線


 アルフレッド・F・ジョーンズは、ファーストフード店に行くのが大好きだ。いつも、そこに行くときは、遊園地に行くみたいに胸がわくわくする。たいてい、それらの店は小さくて、狭い店構えであって、外装はファンシーだったりだ。店内は注文をするカウンターと注文した食べ物を食べることが出来る座席が設置してあり、焼いた安い肉の焦げた匂いと、コーヒーの香り、そして、揚げたてのポテトの匂いが漂っている。それから、厨房の奥から、ガスの熱気がやってくるので、レジで注文をするときは、少し顔をしかめなければならない。
 アルフレッドは、一度に大量の品物を注文する。もちろん、注文したそれらの物は、一日で食べきれる量だ。アルフレッドが注文するメニューは、おもに、ハンバーガーと、チーズバーガー、そらからポテト。飲み物はコーラーとシェイク。シェイクはチョコレートと、ストロベリーのマーブルだ。これが一番美味しいと、長年の研究でわかった。どろどろとした冷たくて強烈に甘いシェイクを一気飲みすると、いつも頭が痛くなる。せっかく美味しいのに、アルフレッドはこのずきっとするような痛みがあまり好きでなく、シェイクを飲んで頭の痛みがやってきたら、コーラーを飲み、炭酸パワーで頭の痛みを吹っ飛ばすようにしている。
 今日もアルフレッドはファーストフード店に立ち寄り、いつものメニューを注文した。その場で食べる時間がないので、テイクアウトだ。センキュー、と物を受け取り、店員にウィンクして色目を使うと、アルフレッドは店を出て、道を歩く。歩きながら、テイクアウトした出来立てのポテトを貪る。アルフレッドは時間を無駄にしないのだ。
 今日、会議が行われるビルにたどり着き、中に入って、IDカードを機械にかざし、警備員の案内で、アルフレッドは最上階に向かう。エレベーターに乗っている間も、アルフレッドはコーラーをすすり、バーガーを食べていた。そんなアルフレッドを警備員は興味深そうに見つめている。最上階に着き、警備員はエレベーターを止めて、アルフレッドだけ外に出した。彼が着いてくるのはここまでだ。廊下を真っ直ぐ行った先に、扉があった。アルフレッドは新しいチーズバーガーにかぶりつきながら、その扉に向かって歩いていった。
 扉を開けると、中は、フリータイムを楽しむ仲間たちの声で、騒がしかった。アルフレッドはみんなに挨拶をして回った。そうしながら、大好きな彼の姿を探したが、彼はまだ来ていないようだ。アルフレッドはつまらなそうに顔をしかめ、テーブルの、自分の席に着くと、そこに食べ物を広げ、好きに食べ出した。
 最近バーガーにも新商品が出来た。日本のてりやき、というタレがかかったバーガーに、マカロニチーズと切ったソーセージを挟んだ奴。アルフレッドは興味本位で今回それを一つだけ注文したが、これが食べてみると、スペシャル美味しかった。とくにタレが甘くて、辛くて、濃厚であり、チーズと相性が良かった。あまりのおいしさにがっつくと、パンがのどの奥に詰まって、アルフレッドは苦しんだ。シェイクでなんとか胃に流し込み、アルフレッドはホッと一息着いた。パンは危険だ。こういうパサパサしたものは慌てると、すぐ喉に詰まる。
「またそんなものばっかり食って、体壊すぞ」
 アルフレッドは、聞き覚えのある声にはっとして、振り返った。激太眉毛の彼が呆れ顔で立っていた。アルフレッドは嬉しそうに顔を輝かせた
「やあ、アーサー!」
 アーサーはにっと笑って答えてくれた。彼の、右の口角だけ上げて、何か企んでいるように笑うやり方が、アルフレッドは好きだった。
 アーサーはアルフレッドから視線をテーブルの食べ物に移し、引いたような表情を作った。
「もっと栄養のある物を食べろよ……」アーサーは言った。「たとえば、ほら、これとか。そうだ、これ、お前にやるよ」
 アーサーは懐から瓶詰めの黒いものを取り出し、アルフレッドに、ん、と差し出す。アルフレッドは、それを見て、うげ、と顔をしかめた。アーサーが手に持っているこの瓶詰めは、栄養価が高いものの、くそ不味いことで有名なのだ。彼は偶然それを持ち合わせていた風を装っているらしいが、今日アルフレッドに会うという事で、わざわざ買ってきたのだろう、とアルフレッドは見抜いた。アーサーはアルフレッドの健康をいつも気にしているのだ。
「俺、それ嫌いなんだぞ……」アルフレッドはプレゼントの受け取りを拒否し、気弱にうなった。
「ばか、栄養があるんだぞこれ」
 アーサーは興奮したように言うと、瓶の蓋を手で回して開けた。そして、その中にどこから取り出したのかスプーンを突き刺し、中の黒いジャムのような物をぐるぐるとかき混ぜ、すくう。
 スプーンに引かれ、粘着質に黒いやつが伸びる。黒い鉛のような色の奥に鈍い光沢がある。それを見ながら、アルフレッドは、あの味を思い出し、げっそりと頬を縮こませた。
「なんだよ、その顔」とアーサーは面白がって、ふっ、と笑った。
 アーサーは黒い物体が乗った銀のスプーンをアルフレッドの口に差し出す。
「ほら、食えよ」
 アルフレッドはプイとそっぽを向く。
「……いらないぞ」
 そう言うと、アーサーの顔が悲しそうにゆがむ。
「なんだよ。人がせっかく……」彼はしょげたようにもごもごと言った。
「ピーナッツバターだったら食べてあげても良いぞ?」助け船を出すつもりでアルフレッドは言った。
 アーサーの眉がぴょんと跳ねる。
「ピーナッツバター? ピーナッツバターは太るだろ。まあ、お前はすでにデブだけど……」
「失礼だな、アーサーは!」
 アルフレッドは顔を赤くして、アーサーに向かってシェイクを投げつける。だが、アーサーはそれを片手でキャッチした。
「あぶねーだろ」
 アルフレッドはムスっと頬を膨らました。それを見て、アーサーの頬がゆるむ。
「可愛い子ぶるなよな」
「可愛い子ぶってないぞ」
 アーサーの目には、アルフレッドが可愛く見えたのだろうか。だったら嬉しい、とアルフレッドは思った。
 アーサーは笑って、アルフレッドの頬をつねる。
「いひゃいぞ!」
「お前のほっぺ柔らかけぇな」アーサーはアルフレッドの頬の触り心地を堪能するように、ぐにぐに指を動かし、言った。
 アルフレッドは顔を赤らめ、のぼせたように、アーサーの顔を凝視していた。

 アルフレッドは最近、こう考えている。
 アーサーはもしかして、俺のことを好きなんじゃないか?

 実際の所はどうかわからないが、彼は何かとアルフレッドを気にかけてくるし、今みたいな喧嘩(喧嘩というか争いというか、馴れ合いというか……)をすると、凄く嬉しそうな顔をするのだ。そして、彼はアルフレッドと接するとき、やけに笑う。
 アルフレッドは彼の反応を思い出して、深く考える。考えれば考えるほど、そうなんじゃないかと思えてくる。自分に都合の良い解釈をしていると思う。けど、それでも、何か、アーサーの行動や仕草からは、普通の人に接するのとは違う感じをうけるのだ。感なんて変な話だけど。
 もし、アーサーが俺のことを好きなら、俺たち、両思いという事になるんだ……!

 打ち明け話。アルフレッドは、アーサーが好きだ。それも、ずいぶん前から片思いをしていた。それこそ子供の時からだ。ずっとこの気持ちを隠してきた。だって、この気持ちは、本来男に向けてはいけないものだと知っていたから。
 長いこと片思いの苦しみを味わい、今やっと、希望が見えてきたと思う。

 だが、向こうから好きだ、とか愛の告白をしてくることがなければ、アルフレッドも、自分の思いを伝えることはしないと決めている。万が一、自分の考えが間違っていたら、と思うと、それはあまりに恐ろしすぎた。
 アーサーは思わせぶりな態度をとるが、それが本当に恋愛としての行為を示しているのかはわからない。それは、アーサー本人だけが知ることだ。


 ロンドンに何かの用事で行ったとき、アーサーが泊まっていけよと進めてきた。アルフレッドも、長いフライトで疲れており、その時は彼の言葉に甘えることにした。
 アーサーの家のリビングの窓からは、彼の庭の薔薇園が見える。窓を少し開けると、甘い、濃密な花の香りが嗅げる。アルフレッドは薔薇を見るのもその香りを嗅ぐのも好きだった。なぜなら、薔薇はアーサーの匂いだからだ。それに、あの薔薇は全部アーサーが育てたものだ。彼が大切にしている物は、アルフレッドも好きだ。風に乗ってきた薔薇の香りを体に浴びながら、アルフレッドは、彼の体に包まれている錯覚を覚えた。
 その横で、アーサーはお茶のセットを持ち出し、リビングのテーブルの上に置くと、紅茶を入れだした。紅茶を入れるときの彼の姿勢は優雅だった。職人のような真剣な眼差しと、手さばきで、彼は二つのティーカッブに紅茶をついだ。
「ねえ、アーサー、アーサーは何で薔薇が好きなんだい」アルフレッドが聞くと、アーサーは、ふと顔を上げた。
「可愛いだろ? 棘があるのに、綺麗な花を咲かせる所とか。たまに手に棘が刺さると腹立つけどな」
 アーサーは意味深にアルフレッドの顔を見て、にやりと笑った。
 アーサーの家に一泊し、帰る朝になった。アルフレッドはお礼を言って、すぐに帰ろうと思った。だが、アーサーは戸口でアルフレッドを引き留めた。
「お前、もし、男に……男に告白されたらどうする」
「え」アルフレッドは驚いた。
 アーサーはアルフレッドの顔をじっと見つめ、アルフレッドが質問の答えを出すのを待っている。いきなり何て質問をするんだろう、とアルフレッドは訝しがった。
「そうだね、ありがとう、って言うぞ」アルフレッドは言った。「それで、俺もその人を好きだったら、付き合うんじゃないかな。でも、別に好きな相手じゃなかったら、断るぞ」
 アーサーは静かに頷いた。その後は何もなく、普通にお別れをした。アルフレッドは、何でこんな質問を? と聞く勇気はなかった。

 好きなのに好きじゃない振りを続けるのも疲れてきた。いつまで経ってもアーサーから告白はされないし、結局、片思いのまま終わるのかな、と落胆していた矢先、事態は大きく変わる。

 アーサーに「好きだ」と告白されたのだ。
 そこは、ある日の会議が終わった後の人通りの少ない廊下での事だった。他に人が来ないことを確認して、彼は言った。
 ずっとそうなんじゃないかと疑って、知っていたはずなのに、アルフレッドは、いざ告白されてしまうと、慌てた。
「っそそそっそそ、そうかい……」
「返事は?」
 そう聞かれ、アルフレッドは、言葉に詰まった。
 どきどきとうるさい心臓を落ち着かせるため、何度も深呼吸し、乾いた唇を舐める。人が来やしないかと、挙動不審に辺りを見渡す。やっと落ち着いて、アルフレッドは口を開いた。
「……俺もだぞ」掠れるような、小さい声だった。
 アーサーの顔が、ぱあ、と明るく輝く。
 とうとう気持ちを伝えてしまった。アルフレッドは気恥ずかしくなって、かーと顔を赤く染めた。
 アーサーはその場でアルフレッドをハグした。彼の温もりに包まれ、アルフレッドは、嬉しすぎて、目に涙が滲んできた。幸福だった。自分の胸の鼓動が騒がしく聞こえてくる。アーサーも同じ気持ちだったらしく、抱き合ってくっついた胸ごしに、彼の心臓の音を強く感じた。彼も緊張しているのだ。アルフレッドは勇気づけられた。
「ありがとう」とアーサーは言った。
 アルフレッドは首を振る。
 それは俺の台詞だぞ……。

 それから、何回かデートを重ね、その度に手を繋いだりしたけど、アルフレッドとアーサーは、なかなかそれ以上先には進まなかった。具体的に言うと、手は繋いでも、キスまではいかない。そういう状態だ。
 恋人同士なのにキスをしないというのは変だ。確かに変だ。だが、アルフレッドはそんなに気にしていなかった。だって、いざアーサーとキスをすることを考えたら、頭が真っ白になって、のぼせたようになり、先を想像できなくなる。手を繋ぐのだって、本当はたまらなく恥ずかしくて、どこかアーサーから離れた遠いところまで走りたくなってしまうのを、いつもぐっと我慢しているのに、それがキスとなれば、もはやアルフレッドはあまりの恥ずかしさにショック死するかもしれないとすら思うのだ。

 だけど、アーサーは密かにその先を望んでいたようで。

「キスしていいか?」
 いつものように、アーサーの家で二人、ソファに腰掛け、映画を見ていたら、突然、アーサーが、ぼそっと、アルフレッドの耳元でささやいた。彼の爽やかな息が、鼓膜まで届いて、ぞくり、と体が震えた。アルフレッドは耳を押さえ、瞳を潤ませ、顔を赤くする。
 アーサーはアルフレッドの首筋に埃でも見つけたのか、それを払うように、首筋に、ふっと息を吹き付けてきた。
 アルフレッドは体に電気が走ったかのように飛び上がった。
「きききききききき、キスだって……?」
 動揺して、声が裏変えったが、アーサーは気にしなかった。ただ、そうだ、と頷いた。
「その、まだ、早いんじゃないかい」
「いや、遅いくらいだろ」
 付き合って、半年が過ぎようとしていた。だけど、アルフレッドは、キスをするにはまだ時期が早いと思っていた。せめて、もう半年は……。
 アルフレッドがぐだぐだ悩んでいると、痺れを切らしたアーサーの手が、アルフレッドの髪に触れ、優しく頭を撫でる。アルフレッドはぎょっとした。そのまま、アーサーの手は、アルフレッドの耳の後ろから、首筋へ下りていく。
 ぞくぞくぞくと、背筋に痺れのようなものが走った。
「あ……アーサー……っ!?」
 アーサーは物欲しそうな目をしていた。アルフレッドはごくりと唾を飲む。
 頬に手を添えられる。アルフレッドの頭はかんかん照りだった。極度の緊張で、訳が分からなくなっている。アルフレッドは湯気が出そうなほど顔を真っ赤に染め、ぎゅっと目を瞑った。アーサーの顔が近づいてい来る気配を感じる。アルフレッドは息を止め、その場に凍り付けにされたように固まっていた。

 そして、とうとう触れた。

 唇に何か……ふわり、としたものが……。

 あ……っ。

 ソファの背もたれに、身が沈んでいく。アーサーのキスは濃厚で、激しかった。アルフレッドの頭をくしゃくしゃにに掻き抱き、唇を吸い、舌を進入させてくる。アルフレッドも口を開けて、受け止めるのに必死だった。
 ちゅ、ちゅ、と舌が絡まりあう音と、興奮した激しい息づかいが部屋に響き、口から溢れた涎が顎に伝う。

 時間が永遠に終わらないように感じた。顔が熱くて、蕩けそうで、死にそうで、その上恥ずかしくて、でも、嬉しくて、幸せで。自分の体の奥でどろどろと暴れる疼きが恐ろしかった。

 ふいにアーサーがアルフレッドから離れた。
「愛してる」と彼は言った。そして、また唇が重なった。

 こうして、アルフレッドは幸せに甘んじて飲まれる事にした。

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capla
性別:
女性
自己紹介:
アメリカと呼ぶより、アルフレッドと呼ぶのが好き。
自分の書く作品が下手糞すぎて泣けてきまして、恥ずかしさから作品倉庫なる秘密基地を作成しました。ぱちぱち。ホームページは難しくて作れず、ブログです。しかし、ブログもなかなか難しい。半日も費やしてしまいました。(汗)

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