ヘタの米様贔屓ブログサイトです。 米受け二次小説を書いています。R18禁サイトです。
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好きな人を振るって、どんな気持ちだろう。つらくて、切なくて、涙がにじんでくる。自分がしたことを思い出すと、恐ろしくて、吐き気がする。そう、まさに今の気持ちだ。傷だらけのアメリカは、すっかり傷心して、ベッドに身を投げていた。今日、アメリカとイギリスの間での長きに渡った戦争が、終わった。いろんなことを体験し、アメリカはとても疲れた。
独立戦争で得た報酬は、イギリスとアメリカ、両国にとってどんな結果をもたらすのだろう。それは、絶対に素晴らしい結果でなくてはならない。アメリカは強く思う。なんせ、アメリカは、国のために大切な人の存在を捨てることになったのだから。
「イギリス、泣いているだろうなぁ……」アメリカは、か細い声でつぶやいた。「怒っているだろうな……」彼のことを考えると気が滅入る。別に考えなくても良かったのだ。国のために、自分の中で大きくなっていた彼の存在を消さなくてはならなかった。国の発展のために必要だったのだ。だけど、愛していたのを忘れる事なんてできっこない。アメリカはイギリスにまだ未練があった。そして、アメリカは考えるという行動から逃げるように、乱暴に布団をかぶった。
日にちが経って、体力が回復しても、アメリカの心はふさぎ込んだままだった。日に当たると、憂鬱でめまいがした。アメリカは好んで影のある所に隠れた。暗い影は、アメリカの心情に共鳴し、癒しをくれる。こんな暗い気持ちになった原因はあの戦争にある。戦争で、イギリスを傷つけてしまったという罪の意識が、アメリカの心を落ち込ませている。前向きなろうとしてもだめなのだ。何度も、アメリカは、イギリスに謝りたいと思った。イギリスの国まで行って、頭を下げたらどうだろう。そうすれば、自分のしたことが許されるんじゃないかと、思った。そして、またイギリスに優しくしてもらえる。だがその考えは甘い。わかっている。戦争の理由や、目的を考えればアメリカはイギリスに媚びることなく、自分の足で立たなくてはならないと理解できる。だが、心はぽっかりと穴があいて、物足りなかった。あいた穴に冷たい風が出入りしている。
アメリカはイギリスの気持ちが知りたかった。自分を本当に愛していてくれたのなら、きっと、この結果を受け入れてくれるはずだ。彼は自分の間違いに気づいて、ちゃんと理解してくれる。そう思うから、確認だけしたかった。アメリカはイギリスに会いたかった。戦争をどう受け止めているのか。君はまだ俺を愛しているのか。聞きたかった。
うだうだとベッドの上を転がたっり、影のあるところでぼうとしながら考える日々が続いた。日を重ねるごとに、謝りたい気持ちはより強くなる。謝りたいことは口実で、じつはただ会いたかっただけなのかもしれない。独立戦争以来、イギリスにずっと会っていない。心がイギリスを欲していた。だけど彼は目の前にいない。今は遠い場所にいる。手を伸ばしても届かないところに。自分から会いに行けば、会える。だけど、行きづらい。もちろん彼の方から会いに来てくれるわけがなく、アメリカはいよいよ自分で決断を下さなくてはならなかった。
イギリスに行って、イギリスと話をしようと決めた日、アメリカは悩みに悩んだ。行かない方がいいんじゃないかという悪い予感が、気持ちを何度も思いとどまらせた。でも、アメリカは行きたかった。体は岩のように重くなって、拒んでいるが。心はイギリスの温もりを望んでいる。自分がしたことを忘れた訳じゃない。だけど、アメリカはイギリスを信じているのだ。きっとわかってくれる……。
荷物は何も持たず、飛行機を飛ばした。耳元で何度も声が聞こえた。「止まれ、止まれ! 今すぐアメリカに戻れ! お前のしようとしていることは自国に対する侮辱だ!」そうじゃないんだ。ただ、イギリスが、この戦争の結果に動揺し、わけがわからない気持ちになっているんじゃないかって心配したから、手を引いて、道を教えてやらないと彼が歩けないんじゃないかと不安だったから。
イギリスに着いた。彼は元気だろうか。アメリカはイギリスの地を歩いて、イギリスの家に向かった。心臓が不安定に動いていた。彼の家に着くまでの間、アメリカの頭は真っ白で、魂が半分抜けているような状態だった。それほど彼に会うことを恐れているのだ。恐れているのに、会いたいのだ。
イギリスの家の玄関の前に立って、アメリカはじっとドアを見つめた。彼との間に、この壁がある内はまだ安全だ。だけど、すぐとなりの起爆スイッチを押して見ろ。アメリカは一気に地獄の地に立たなくてはならなくなる。緊張して、のどが渇いた。まだ、魂は抜けたままだ。アメリカは静かに呼び鈴に手を伸ばした。だけど、それを押す前にドアが開いた。
待ち望んでいた彼の姿である。イギリスが立っている。彼は正装を着ていて、どこかに出かける様子だった。彼がアメリカを見て笑ってくれたら、どんなにアメリカの気持ちが安らいだろう。だが、現実は違う。彼はアメリカを心底汚いもの見るかのように侮蔑を込めて睨みつけてきた。針のような視線。アメリカの表情がこわばる。体がばらばらにいなって崩れていくようだった。そんな目で見られて、胸が痛んだ。
「何しに来た」イギリスは低い声で言った。
話をしに来たんだよ。君が心配で。そう言って笑おうと思ったけど、声はのどの奥でつっかえて出てこないし、顔は氷のように固まって動かない。アメリカは焦った。目の前が真っ暗になって、足が震えた。
イギリスは、はん、と鼻で笑った。
「もうここへは来るな。顔も見たくねえ」
イギリスは外へ出てくると、家の玄関に鍵をかけた。アメリカはとなりでそれを眺めていた。
「失せろ。お前なんか。俺はお前が嫌いなんだよ。お前の顔を見ると殺したくなる」イギリスは忌々しそうに言った。
アメリカは、眉をひそめ、ぐ、と息を飲んだ。
イギリスはアメリカの肩を突き飛ばし、車に乗り込んだ。追いかけられなかった。イギリスの気迫に負け、アメリカは、そのままイギリスが車で去っていくのを見送った。
宙を歩いているようだった。生きている心地がしない。むしろ死んでいるようだった。気分が重いまま、アメリカは自宅に戻った。傷ついていた。自室で一人になると、アメリカは耐えきれず涙をこぼした。そして、枕を抱いて、ベッドの上でうんと泣いた。つらい。辛すぎて、呼吸するのも苦しかった。
嫌われた。
事実が、アメリカの体を、心を抉るように縛り付ける。そのままアメリカを地獄に叩きつけ、容赦なく鋭い鞭で打つ。
好きなのに、どうして。あんなに愛し、愛をくれた人が、もう居ない。身が錆びていく。寒い。苦しい。思いが届かない。
イギリスは諦めろ。忘れろ。アメリカは自分に命令しつづけた。命令の通りにすることで、アメリカはこころの苦しみから解放された。だけど、ふとした瞬間、イギリスを思い出し、心臓がずたずたに破れる思いを味わった。欲しいのに、手に入れることが叶わない。彼の愛をもう一度、手に出来たらどんなにいいだろう。満たされない気持ちのまま、死んだように生きた。人前に出るときは、仮面をかぶった。だが、日に日に鬱憤は溜まり、ある時、ついに爆発した。
愛だ。愛が、足りない。愛が欲しい。イギリスの愛が欲しい。でも、彼が居ないからどうしようもない! 不安に胸が押しつぶされるようだった。
アメリカは電話の受話器を取った。
ベルが鳴り、アメリカは玄関の扉を開けた。
「やあ」
「よ。で、用事は?」
「まあ、中へ入ってくれよ」
人の良い笑みを浮かべるフランスを、騙すように中に通し、アメリカはドアを閉め、鍵をかけた。胸の中で、ちらちらと炎がゆれている。不気味な黒い色をしている。
「ねえ、フランス、愛について教えてくれよ」アメリカは言った。
「ん? どうした」
「愛が足りないんだぞ」酷い喉の渇きだ。心臓がどきどきしている。アメリカはフランスにしなだれかかった。フランスの体がびくりと動く。
フランスはアメリカの瞳から情欲の色を読みとって、はっと口をつぐんだ。
「……お兄さん、よく、わからないなぁ……」
「お願いだよ、フランス……!」
言い逃れようとするフランスに、アメリカは掴みかかった。
「ずっと苦しくて。いつか楽になると思っていたけど、苦しいままで、心細い気持ちは、ずっとずっと収まらないんだ!」興奮で頭が燃えている。ぜえぜえと息があがる。「足りないんだぞ、愛が!」アメリカは必死だった。
そのとき、体の奥で、ぷつん、と何かが切れた音がした。涙がぶわりとあふれ出た。感情の決壊だ。もはや自分で自分を制御することなど不可能だ。ぼたぼたと床に涙の滴がこぼれ落ち、シミになった。アメリカは自分の体が震えるのを感じた。
フランスはアメリカを落ち着かせるように、そっと頭を撫でた。
「わかった。落ち着け。お兄さんが何とかしてやるから」
そうは言うけど、いったい彼に何が出来るだろう。彼は望んだものをくれるのだろうか。
満たされない。愛が足りない。愛、。
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