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If it is a dog ②

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If it is a dog ②

 警察署には、留置所がある。アルフレッドは、そこに入れられた。白い鉄の格子のついた檻が、横にずらりと並び、そのそれぞれの檻に、数人の人が一緒にされて入れられているのである。人間の犬小屋だ、とアルフレッドは思った。
「明日、精神科医を連れてくるから、今夜はここで寝るあるよ」と王はアルフレッドに言った。
 アルフレッドは、房の一つに入れられ、鍵を閉められて閉じこめられた。房の中には、先客が一人居た。彼はベッドに横になり、眠っていた。
「王、俺は、前の犬小屋でみんなと一緒に寝たいんだぞ」
「お前の寝床は、ここある。静かに寝るあるよ。おやすみある」
 そう言って、王は留置所の刑務官に何か頼むと、出て行った。アルフレッドは王を見送ってから、ベッドで眠っている男に向き直った。彼はアルフレッドに背を向け、壁に向き合う感じで横に寝ていたのだが、アルフレッドは、彼がいったいどんな顔をしているのか気になった。そして、どんな人柄なのかも気になった。アルフレッドは、最初、房の中をうろうろと歩き回って、知らない人と二人きりにされた孤独さや、その知らない人の顔を見てやりたい好奇心を我慢していたが、遂には好奇心を抑えきれなくなって、ベッドで眠る男に近づいていった。
「ねえ、君……」アルフレッドは、ためらいがちに声を出した。
 彼はぐるり、と首を動かして、アルフレッドを振り返った。最初から起きていたみたいに、彼の目は冴えていた。
「話しかけないでくれる? 僕たちは他人なんだ」
 彼はそれだけ言うと、また壁を向いてしまった。
「ごめんよ……」
 アルフレッドは、自分を虐待したばあさんを思いだし、悲しくなって謝った。
 アルフレッドは、体を休ませようと、空いているベッドに乗ってみたが、落ち着かなくて、結局、同室の男から遠く離れた、角の、床の上に寝そべった。そして、アルフレッドは、そこでアーサーたちが自分の所へ遣って来る足音がしないかと、じっと耳をそばだてていた。
 ある時、同室の男が寝返りを打った。そして、彼は、アルフレッドが角の床に寝ている事に気がついた。
「君、なんでそんな所で寝ているの? そこに空いたベッドがちゃんとあるじゃない」
「だって、こっちの方が落ち着くんだぞ」
「床で寝るだなんて、まるで犬だ」
「犬さ。俺は元は犬だったんだぞ」
 すると、その男は、柔らかそうな、短いシルバーブロンドの髪を揺らしながら笑い出した。
「君はどうやら安全な人間みたいだね」
「本当は、人間じゃなくて……」
「うん、犬、ね」
 彼はまだクスクスと笑っている。アルフレッドは、彼の笑顔を見て、彼が悪い人間ではないと判断し、緊張を解いた。
 彼はベッドから体を起こし、「僕はイヴァン。君は」とアルフレッドに尋ねた。
「アルフレッドだぞ」
「アルフレッド君。ちょっと、君、僕に協力して、大声を出して暴れてみてくれるかな」
「協力するのは構わないけど、でも、王に静かに寝ろと言われているんだぞ」
「大丈夫だよ。君が相手なら、誰も怒りはしないから」
 アルフレッドは迷ったが、優しく頼まれたのを断るのは、ヤワな気がした。
「わかったぞ」
「ありがとう」
 アルフレッドは、大きく息を吸って、腹に空気を溜め、咽を震わせた。
「おーい、おーい、アーサー、フランシスー! きくー、おーう! みんなー! おーい!」
 横で、イヴァンが、「体を動かして、たくさん暴れて」と小さな声で指示を出してきたので、アルフレッドはその通りにした。房の中を走り回り、ベッドの上に飛び乗っては下りて、また房の中を走り回る。そして、格子をつかんで揺らし、叫ぶ。
 あまりのうるささに、他の房からヤジが飛んでくる。イヴァンに、手で、やれというジェスチャーを受け、アルフレッドは叫び続けた。
 とうとう五月蠅さに我慢できなくなった房の誰かが、見張りの警官に合図を送り、呼ばれた見張りの警官は、アルフレッドの房の前にやってきた。
「うるせえぞ。静かにしやがれ」
 この警官は、とても威圧感のある警官だった。銀色の短い髪に、赤ワイン色の瞳は、正義の宿命に爛々と輝き、筋肉もしっかりついていて、背も高い。彼は人を見るとき、ほんの少し眉をひそめ、目を細めるのがくせだった。
 アルフレッドは、イヴァンに助けを求めるような視線を送ったが、イヴァンが「もっと叫んで」と口を動かして指示を出したので、アルフレッドは意を決して再び叫んだ。
「おーい」
「うるせえ」
「アーサー」
「うるせえよ」
「フラーンシスー」
「だまれ小僧!」
 警官は、叫ぶと、ベルトに差した警棒に手をかけた。アルフレッドは、それを見て、叩かれると思って、恐ろしくなり、体を縮ませ、一目散に角の方に逃げた。アルフレッドが逃げたことに対し、イヴァンは、とても不愉快そうに顔を歪めた。彼はまだアルフレッドに叫ぶように要求しているのだ。
 だが、アルフレッドは叩かれるのが怖くて、大人しくなってしまった。
 警官は静かになった事に満足すると、もう騒ぐこともないだろうとその場を後にした。
「君は本当に使えないね」とイヴァンは、警官が居なくなってから、怯えるアルフレッドを見下すように言った。
「あれを見てごらん」イヴァンは向かいの房を指さした。そこには、骨と皮の、年老いた爺さんが、目をハイエナのように血走らせてこちらを見ていた。
「彼にはね、彼を助けようとする人がだれもいないんだ。彼の目を見てごらん。とても汚い濁った目をしているでしょ? あれは現実に不満を持った人の目だよ。何か物足りない気分になって、常にそれを求めている、わがままで、傲慢な人の目。欲しい物が手に入らないから、彼の心は渇ききっている。僕はね、そういう人を見ると、可哀想だな、と思って、放っておけなくなっちゃうんだ」
 イヴァンはベッドのマットを動かして、その下から、小さな袋を取り出した。薄っぺらい、透明なナイロンの袋に、粉のような物が少しだけ入っている。
「僕は、これを彼に渡したいんだよ。これは彼が欲しがっているものだよ。彼はこれが、欲しくて欲しくて仕方がないんだ。でも、これは彼が持っていたらいけないものでもある。彼だけじゃなくて、みんなも、持っていたらいけないんだ。僕だって……。警官には黙っていてよ。アルフレッド君。僕がこれを持っているのは、不本意な事なんだよ。人助けの為に持たなくちゃいけなかった。もし警官に見つかったら、殺されちゃう」イヴァンは嘆いた。「警官にバレないように、安全に、これを彼の房へ届けたい。そのためには、アルフレッド君の協力が必要なんだ。君が警察に注意を向けて、あわよくば、檻の外に出されて離れたところに連れて行かれる。そうしたら、僕はそのすきに、あの人にこれを届けられる。安全にね」
 アルフレッドは、向かいの房の爺さんに視線を向けた。爺さんは、相変わらず、涙をためた目を血走らせて、こちらを、アルフレッドを見ていた。彼はアルフレッドに期待しているのである。アルフレッドが再び叫びだして、警官の注意を引きつけてくれるのを。そして、その後、イヴァンから貰える幸福を。
「わかったぞ」アルフレッドは言った。「あの人、とても苦しそうな顔をしているんだぞ。それを渡して、彼の苦しい気持ちが紛れるのなら、俺、また叩かれてもいいんだ」
 アルフレッドは、自分が車にはねられて怪我をしたとき、助けられたあの日を思い出して、爺さんにも、自分と同じように、救われた気分になって欲しいと思った。
 そして、アルフレッドは再び叫んだ。直ぐに、先ほどの警官がやってきた。彼は、不機嫌そうにまた、警棒に手をかける動作をしたが、アルフレッドは構わず叫び続け、そして暴れ、格子を揺らした。その時、信じられないことが起こった。アルフレッドが掴んだ格子の棒の一つが、アルフレッドが揺らした拍子に、ぐにゃり、と折れ曲がってしまったのだ。警官はぎょっと目を剥いた。
 格子は、内側に大きく湾曲し、その部分には、大きな隙間が出来ていた。アルフレッドは、隣の鉄棒も強めに引っ張ってみた。すると、それも見事に折れ曲がったので、隙間は、更に大きく広がった。
「おい、やめろ!」警官が焦って叫び、空いた隙間を体でふさぐ。
 構わず、アルフレッドは、助走をつけて、その隙間に向かって突進した。隙間を塞いでいた警官は、アルフレッドの体当たりで、あっさりと吹っ飛ばされ、道を塞いでいた邪魔者が居なくなったので、アルフレッドは格子の外に出られた。アルフレッドは、イヴァンと向かいの房にいる爺さん、それから、床から起きあがろうとしている警官を振り返った。自分が警官をおびき寄せないといけない。アルフレッドは、また前を向いて、出口を見つけると、出口に向かって走った。
「脱獄だーーーー!」
 後ろで警官が叫んだ。アルフレッドは、出口のドアを開けて、留置所を飛び出した。

 せまい廊下を走り、階段を駆け上ったり下りたりしながら、アルフレッドは、追ってくる警官から逃げまどっていた。ひたすら走っているうちに、アルフレッドは見覚えのある通路に出た。アルフレッドが、犬としてここで暮らしていたとき、グラウンドと、犬小屋を行き来するときに、通った事のある道だ。この先に仲間たちがいるのだと思うと、アルフレッドは懐かしさから、胸が熱いもので締め付けらるのを感じた。アルフレッドは足を早め、あの懐かしい白いドアを見つけると、勢いよく開いた。
 ところが、中には誰も居なかった。仲間の犬たちが居るはずのケージの中は空っぽで、がらんとして静かだった。
「そっか、今は訓練中なんだ」
 アルフレッドは犬小屋の中を見渡した。そこで、自分の寝床だった床の上のタオルが、見あたらない事に気がついた。
「俺の寝床がないぞ……」
 長い間、留守にしていたので、片づけられてしまったのかもしれない。
「よーうし、追いつめたぜ。観念しろ脱獄犯!」
 アルフレッドを追いかけていた警官が、ついにアルフレッドを追いつめ、犬小屋の入り口を塞ぐように立って叫んだ。
「もう追いついたのかい。早すぎるんだぞ」
 アルフレッドは、彼の足の速さに驚きながらも楽しそうに言った。
「俺様を誰だと思ってやがる。ギルベルト・バイルシュミット様だぞ。俺様を撒こうだなんて100年早えよ」彼はにやりと笑った。
「さあ、大人しくお縄につけ」
 ギルベルトは、腰のベルトから手錠を取り出すと、それを右手に構えて、じりじりとアルフレッドの方に近づいていった。
 アルフレッドの方も、また逃げる準備のため、腰を落とし、姿勢を低くして助走をつけた。捕まえられないように外へ逃げるのは簡単だ。房から出た時みたいに、ギルベルトに突進して、突き飛ばしてやればいい。そこで邪魔者が居なくなった所で、開いた出口から抜け出すのだ。
 だが、ギルベルトは、またアルフレッドに突き飛ばされるかもしれないというのに、まったく余裕そうな、涼しい顔をしていた。しかも、口元には笑みすら浮かべている。先ほど突き飛ばされた失態を忘れてしまったかのようだ。
 そして、ギルベルトが、アルフレッドの方に一歩踏み出した時、アルフレッドは、いよいよと床を蹴った。
「二度も同じ手は通用しねえぜ!」ギルベルトは、可笑しそうに笑って、叫んだ。
 ギルベルトは足をがに股に開き、腕を大きく横に広げた。突進してくるアルフレッドを捕まえてやろうというのだ。しかし、アルフレッドはあっさりとギルベルトを突き飛ばしてしまった。
「うおっ」
 当たりどころが悪かったのか、ギルベルトは、そのまま宙を高く舞い、最後には落ちて、床に伸びた。死んではいないようだ。彼は攻撃を受けた腹を抱え、小さく身悶えていた。
 アルフレッドは彼の体を飛び越えて、廊下を走った。
「Stop! Boy! Shit down!」
 廊下に響きわたる、厳格な叫び声に、アルフレッドは立ち止まっていた。
 その命令は、アルフレッドの耳に聞き覚えのある声で発せられた。アルフレッドは、体に染み着いた動きのまま、立ち止まり、そして、命令の通り、床に可愛らしく体育座りをした。
 声を聞いた瞬間、アルフレッドの体が勝手にそのように動いていた。
「良く出来ました」
 優しい声。そうだ、命令に従った後、彼はいつも優しく誉めてくれたっけ。
 アルフレッドは振り返った。菊が居た。それから、彼の横には、フランシスと、アーサーも居た。
「やっとみんなに会えたね」

「署長に確認しましたところ、確かに、あのおばあさんの家に、私たちのアルフレッドが受け渡されたという話でした」菊はアルフレッドの目を見ながら言った。
「そうだろう? 俺、署長に置いて行かれたんだ」
「教えて欲しいんです。あなたはなぜ、アルフレッドの事を知っているのですか。なぜ自分のことを犬のアルフレッドだと思いこんでいるのですか。なぜ、アルフレッドの首輪をあなたは自分の首にはめているのですか」
「俺がアルフレッドだからさ。何度も言わせないでくれよ。君は疑っているようだけど、俺は本当に君たちの知っている犬のアルフレッドなんだ。目が覚めたら人間の姿になっていたんだぞ」
「信じられないな」とフランシスは冷たく言った。
「本当だぞ」アルフレッドはムクレた。
 アーサーだけは、アルフレッドを疑う素振りを見せなかった。だけど、信じる素振りも見せなかった。ただ、品定めをするような、見極めるような、そんな探るような険しい目でアルフレッドを見つめていた。
 アルフレッドたちが居るのは、取調室だ。倒れたギルベルトを保健師に引き渡した後、アルフレッドは、再びここに連れてこられた。
「非科学的な見解ですが、この方に、アルフレッドの霊が乗り移っているとは考えられませんかね」菊はアルフレッドを指さして言った。
「幽霊だって?」
「ええ」
 フランシスは、考え込むように低くうなった。
「でも、俺は……あいつが死んだだなんて思いたくないなあ……」
 菊はハッと息を飲んだ。
「そうですね……」菊は自分で言った発言ながら、アルフレッドの死を想像してしまい、悲しくなった。
 部屋に四人居る内の二人もが、大切な存在の死を考えたものだから、部屋の中は、どんよりと重苦しくなっていた。
 その空気の流れを変えたのはアーサーの発言だった。
「アルフレッドは死んでねえ。俺は、こいつが、アルフレッドだと思う」
 アーサーはアルフレッドを見据えて、きっぱりと言った。
「アーサーも幽霊だって言いたいの?」フランシスは不満そうな顔をして、アーサーに意見した。
 アーサーは静かに首を横に振った。
「幽霊じゃない。元は犬だったのが、人間になった。俺には、そう見える」
「そう見えるって……」
「信じては貰えないと思うが、実は、俺には昔から霊感があってだな。人間や、動物のオーラが見えるんだ。そして、こいつのオーラはアルフレッドと同じなんだ……」アーサーはそう言うと、それっきり黙り込んでしまった。というのも、彼は、自分に霊感があると言ってしまったことで、菊とフランシスから変に思われないかと気になってしまったのだ。アーサーは頭がおかしいと罵られるのを覚悟していた。
 しかし、罵りの声はかけられなかった。代わりに、警察署中に、けたたましいサイレンが鳴り響いた。
「何の音だい?」アルフレッドは音に驚いて、辺りを挙動不審に伺う。
「脱獄だ」フランシスは眉をひそめて椅子から立ち上がった。彼はドアを開け、取調室から出ると、丁度廊下を走ってきた茶髪の警官を捕まえた。
「おい、誰が脱獄したんだ」
「ヴェー、イヴァンとか言う奴が脱獄したんだよ~。奴はまだ逃走中で、動ける警官はみんな捜索に当たっているよ~」
「イヴァンだって!」アルフレッドは叫んだ。「彼、逃げたのかい?」
「おや、お知り合いですか」
「うん」アルフレッドは菊の顔を見て、頷いた。「同じ檻に入れられていたんだ」
「なんでも檻の格子がひしゃげられていたらしいんだよ。そこから外に逃げ出したという話だね~」
「俺が開けた穴じゃないか」アルフレッドは呟いた。
「俺たちも捜索に当たろう。行くぞ、アーサー」
「ああ」
 アーサーとフランシスは腰に差した拳銃に弾を込め、茶髪の警官と、どこかに走っていった。
 アルフレッドも、後を追おうとしたが、菊に止められた。
「あなたはここに残っていて下さい。警察に捕まっている身なんですから、勝手に外に出られては困ります」
「イヴァンはどこに行ったんだい」アルフレッドは菊に聞いた。
「さあ、わかりませんよ。自由を求める人間というのは、当てもなく走るものですからね」
「菊、……あのさ、アーサーとフランシスは、なんで銃に弾を込めたんだい? 彼らはイヴァンを探しに行くのに銃を……使うつもりかい?」
「そりゃあ、勿論、使わざる得ない状況では使うでしょう」
「俺、警察犬の訓練で銃について習ったぞ。警官は悪い奴を銃で撃って、殺すんだ。でも、イヴァンは悪い奴じゃない。銃を使う相手が間違っているんだぞ」
「あの人は悪い人ですよ」菊は、僅かに、アルフレッドを馬鹿にするような感じで、フッと笑った。
「イヴァンは……」
 アルフレッドは、彼がお爺さんにしてやった良い行いを菊に話してやりたかった。でも、イヴァンに口止めされていたので、言えなかった。
「イヴァンは、優しいんだ……」アルフレッドは言いたいことを全て我慢して、これだけやっと言えた。
 菊は大した反応を示さなかったが、心なしか、アルフレッドは、菊の目つきが冷たくなったような感じを受けた。
(悪を取り締まる側の人間である為には、視野の広い目と、冷静な頭を持って、公平な判断が出来なくてはならない。本田菊という男は、それが出来る男だった。イヴァンの良い面しか知らないアルフレッドには分からない事を彼は知っていた。)
「菊、俺、アーサーとフランシスに、イヴァンを撃たないでって伝えたいんだ。イヴァンは良い奴だから。アーサーたちが間違いを犯さないように……」
「……アルフレッドさん……お腹空いてませんか?」
「え?」
「何か食べ物を持ってきて差し上げましょう」
 菊はそう言うと、部屋を出て、部屋の中にアルフレッドを一人残し、ドアに鍵をかけてしまった。
 部屋を出た菊は、鍵を閉めてきたとは言え、檻を破った人間を一人にするのは不安だった。そこで、ルートヴィッヒという大柄な男に、取調室の見張りを頼んだ。自分は、アルフレッドに食べさせる食べ物を貰う為、食堂に出かけた。

 雲の上で、神は慌てていた。彼は時折、雲の下を覗き、問題の男の姿を見つけると、ワッと手を挙げて、驚いた振りをし、冷や汗を流しながら、わたわたと忙しなく雲の上を歩き回った。
「とんでもない間違いをしでかした。わしはどうしたら良いのだろう!」
 神は急に立ち止まると、じとっと湿った眼で、太陽を睨みつけた。
「知らない振りをすることも出来よう。だが、これは明らかなる間違いだ。あってはならない事だ。神は早急に対処せねばならんのだ」
 神は、意を決して、もう一度雲の下を覗いた。そして、何か短い念仏を唱えた。

 バサっと、自分の体の回りに服が落ちた。アルフレッドが今まで着ていた服だ。取調室に置かれたテーブルが、とても高い所にあるように見える。いったいどうしたというのだろう。自分の体に何が起こったのか、深く考える前に、コンコン、と取調室のドアがノックされる。
 菊が戻ってきたのかもしれない。
「わん」とアルフレッドは返事をして、ドアに駆け寄った。蹄が床をかちゃかちゃと叩く。
 ノブが回され、ドアが開けられる。そこに立っていたのは、背の高い、筋肉質な白人男だった。瞳は、アルフレッドと同じ青い色で、金色の短い髪をしていて、前髪を後ろに撫でつけている。頭に何か塗っているのか、頭はつやつやと光り、ぺったんこに固まっていた。彼は菊じゃなかった。
(誰……?)
 ルートヴィッヒは、厳めしい顔をして、アルフレッドを見下ろしていた。そして、彼はアルフレッドに向かって、右手を振り下ろした。
 アルフレッドは驚いた。
「わん!」
 殴られると思って、アルフレッドは、逃げるために駆けだしていた。ちょうどよくルートヴィッヒの股の間が開いていたので、そこを潜って抜け、廊下に出たら、そのまま全速力で走って行った。

 ルートヴィッヒは、勿論、アルフレッドを殴ろうとしたわけではない。ルートヴィッヒは、犬が大好きだったので、頭を撫でてやろうと、手を伸ばしただけだった。
「わんこー!」
 ルートヴィッヒは逃げたアルフレッドを追いかけた。

 勢いのままに、アルフレッドは警察署の外に出てきた。外に出てきて、やっと、胸のどきどきが収まった。外はもうすっかり暗くなり、夜だった。空には金色の三日月が浮かび、それは闇の中でやけに美しく光っていた。全ての街灯には明かりが灯り、人間が操る車はヘッドライトをつけて、道路を行き来している。
 アルフレッドは、歩道を少し歩いてから、せっかく外に出られたのだから、アーサー達が間違ってイヴァンを銃で撃ってしまわないように、知らせにいこう、と思い、アルフレッドは地面の匂いを嗅いで、彼らの匂いを探した。しかし、アーサーとフランシスは車で移動したらしく、二人の匂いは残っていなかった。代わりに、イヴァンの匂いは残っていたので、アルフレッドは彼の匂いをたどった。
 大きな街の通りから、細い路地裏に入った。入り組んだ道を暫く歩いていくと、アルフレッドは、誰かが前方を歩いていることに気がついた。路地横の、建物の窓からの明かりで、ときおり、その人物の姿が照らしだされる。その人は頭からすっぽりとボロい毛布を被っているようで、動きづらそうに歩いていた。
 アルフレッドは、もしや、と思い、ピンときて、彼に向かって一声吠えてやった。彼は振り返った。髪も、口元も、毛布で隠してはいるが、窓の明かりで照らされた彼の顔は、見覚えがある。紫色の瞳といい、高い鼻と言い、間違いなく彼はイヴァンだった。
 アルフレッドは、イヴァンを見つけた事が嬉しくて、尻尾を振りながら、彼に駆け寄った。

 イヴァンは最初、犬を見つけたとき、警察の犬に見つかったのかと思って、慌てた。だが、近づいてくる犬をよくよく見ると、その犬からは、邪気が感じられず、顔も、警察犬ほど険しくないし、穏やかなので、これは違うかもしれないと思い直した。イヴァンはそのまま犬が近づくのを黙って待っていた。

 アルフレッドは、イヴァンに再び会えた事を喜び、信頼を込めて、彼の両足に飛びついた。
「どこの犬かな」
(檻の中で会っただろ? 俺のこと忘れないでくれよ!)
 アルフレッドは、尻尾を振り、わん、と吠えた。
「君、可愛いね」
 イヴァンは動物が好きだった。その中でも、犬は断トツで好きだった。彼は、アルフレッドの頭や首を、わしわしと撫でてやった。ひとしきり撫でると、彼は、「今は余裕がないから、あまり構ってやれないんだ。ごめんね」と言って、名残惜しそうにアルフレッドを一撫ですると、別れを口にし、アルフレッドに背を向けて、歩いて行ってしまう。
 アルフレッドはイヴァンについて行った。
 イヴァンは、アルフレッドが着いてきている事に気がつくと、困った顔をした。
「着いて気ちゃだめだよ。わんちゃん。なんで着いてくるの? お腹減っているの? 僕、食べ物は持っていないんだよ。ごめんね。……持っているのはこれぐらい」
 イヴァンはポケットから白い粉が入った小さな透明な袋を取り出して、アルフレッドに見せた。
 それは、留置所で、イヴァンがお爺さんに渡した粉と同じ物だった。
「これは食べ物じゃないよ。……毒なの。だから、君にはあげられないね」
 そう言うと、イヴァンはすぐにそれをズボンのポケットに仕舞った。
 アルフレッドは、わん、と吠えた。
 警官たちが間違って彼を撃たないように、彼のそばについて見張っていよう、とアルフレッドは思った。そして、警官が来たら、彼を撃たないで、とお願いするのだ。そう心に決めて、アルフレッドはまた着いて行こうとした。だが、イヴァンにとっては着いて来られる事が迷惑だった。犬を連れていたら、下手に目立って、警察に見つかりやすくなってしまう。
 イヴァンはアルフレッドを追い払おうと躍起になった。手をしっしっ、と振ってみたり、走ってみたり、脅かしてみたり。しかし、アルフレッドはイヴァンから離れなかった。ぴったりとイヴァンの足下に寄り添うのである。
 イヴァンは、最後の手段だとばかりに、毛布を脱ぐと、それをアルフレッドの体の上に落とした。アルフレッドが毛布の中で身動きが取れなくなっている内に、イヴァンは自分だけ逃げ去った。
 アルフレッドがやっとこさ毛布の中から這い出た時、もうすでにイヴァンの姿はなかった。だが、アルフレッドが悲観することはなかった。アルフレッドは鼻が利く。また匂いを嗅いで、イヴァンを追いかければ良いだけだ。
 アルフレッドは、早速それを実践した。
 少し歩いただけで、アルフレッドは直ぐにイヴァンを見つけられた。というのも、イヴァンは、たった50メートルくらいしか距離を移動していなかったのだ。路地だって真っ直ぐではないので、彼は一番最初の曲がり角を右に曲がり、そして、アルフレッドからの死角に、彼は立った。別に隠れているとか、そんなのじゃなかった。イヴァンは角を曲がった先で、誰かと対峙し、逃げ出せずにいたのだ。

 イヴァンが白い粉を持ち歩くようになったのは、イヴァンがティーンの頃、薬の売人として働くようになってからだ。イヴァンはもともと貧しい家に育った男で、昔は常に金がなく、苦しい思いをしていた。苦しみの中に浸かっていると、清く正しく生きるという事の無意味さを馬鹿馬鹿しさを痛感できた。正しく生きることで自分の首を絞めるのなら、悪いことをして穏やかな生活を手に入れたい。イヴァンの根性は、そういった苦しみの中でねじ曲がり、彼はうそをついたり、悪いことをすることが平気になった。売人というのは、楽な仕事である。手に入れた薬を、欲しいという人に売れば良いだけなのだ。それで、金が手に入った。悪い客相手には、イヴァンだって難しい対応をしなくてはならないが、それ以外の客は、みんな良い人たちで、彼らに感謝されるたび、イヴァンは売人という仕事に就いていて良かったと思った。不幸な生活に揉まれていた時は、社会から自分が必要とされていないと常に感じて、肩見狭く生きていたものだが、売人になってからは、自分を卑下しなくなった。たとえどんなに悪いイメージの役回りだろうと、イヴァンは、結果として人から有り難がられる存在である自分に、誇りを持っていた。

「あなたでしょ。やっと見つけたわ。あたしの息子が薬でおかしくなって自殺してから、息子を殺したのが誰か、ずっと探していたの……。ある親切な方に会って、あたしはあなたの顔を知ったわ。毎日のように街であなたを探した。そして、今日、あたしはあなたを見つけられた」
 イヴァンと対峙していた女は、そう言うと、鈍く光る銀色の何かをイヴァンに突きつけた。
 そして、パンッ……、という乾いた音がした。
 イヴァンは少し前のめりになると、腹を押さえながら、ゆっくりと地面に崩れ落ちる。
 女は狂ったように甲高く笑い叫び、逃げていった。
 アルフレッドは、何が起こったのか分からなかった。しかし、嫌な予感がして、すぐさまイヴァンに駆け寄った。イヴァンが押さえている腹の辺りからは、生臭い鉄の匂いがした。彼の腹は、女に撃たれたせいで穴が開き、大量の血が滴っていたのだ。イヴァンは苦しそうに呻く。
「……はぁ、これだ、から……はぁ、……人間は、嫌い……なんだ……。身勝手で……愛するに、値しない……」
 イヴァンは苦々しく笑い、体を地面に倒すと、そのまま目を閉じてしまった。
 あ、イヴァンが死ぬ。
 アルフレッドの心臓は、冷水を浴びたみたいに、ひやっと冷たくなった。アルフレッドはヒンヒンと鼻を鳴らしながらイヴァンの顔を舐めてみたが、イヴァンはピクリとも動かない。その事が、とてつもなく恐ろしかった。
(イヴァン! イヴァン! イヴァンが死ぬぞ! 誰か! 誰かー!)
 アルフレッドは助けを求めて、おんおんと吠えた。イヴァンが眠ってしまわないように、ときおり彼の顔を舐めて、彼を起こした。そう、イヴァンはまだ生きていた。だが、虫の息で、彼は時々ぱたっと死んで、時々ハッとしたように意識を取り戻すのを繰り返した。これは、死を迎える人間が通る行程で、イヴァンは正に、これから死のうとしていた。
 何度目かの意識を取り戻したとき、イヴァンは言った。
「ああ……僕の、最、後を看取って……くれるのが……人間じゃなくて、本当に良かった……」
 イヴァンは涙を流していた。傷の痛みのせいで泣いているのか、それとも、無念がために悔しくて泣いているのか、アルフレッドにはわからなかった。
(死んじゃ駄目だ、イヴァン!)
 アルフレッドは、吠えて、イヴァンを励ました。その内に、どこからともなく、足音が聞こえる事に、アルフレッドは気がついた。耳を澄ましてみると、その足音はどうやらこちらに向かって進んでいるようであった。助けがきたのかもしれない、とアルフレッドは思った。アルフレッドはその足音のする方に向かって走った。
 足音の主は、二人の人間だった。一人は眉毛の太い警官で、もう一人は顎髭を生やした警官だった。
 なんと言う事だろう。彼らこそ、アルフレッドが会いたいと求めて止まなかった彼らだったのだ。アルフレッドは、わん、と吠えた。
 二人の警官は、アルフレッドを懐中電灯の明かりで照らす。
「アルフレッド!」眉毛の太い警官、アーサーがアルフレッドの名前を叫んだ。
(君たち。今からイヴァンの所へ案内するぞ。彼、死にそうなんだ。あ、それから、彼は良い奴だから、銃で撃つなんて事しないでくれよ!)
 アルフレッドは彼らに、着いて来こい、と吠えるや、来た道を引き返して走った。二人はちゃんと着いて来た。
 イヴァンが倒れている場所まで来ると、アルフレッドはまた一度吠えた。
 アーサーとフランシスは、懐中電灯で照らし、腹から血を流しているイヴァンを見つけた。アルフレッドは、彼らがイヴァンを銃で撃ってしまわないように、イヴァンの体を守るようにして彼の体の横に座った。
「おい! どうしたんだ!」フランシスは叫んだ。
 アーサーとフランシスは、すぐにイヴァンの体に触って、彼が生きているかどうか確かめた。イヴァンはまだ生きている。
「腹を撃たれているようだ。救急車を呼ぼう」フランシスは狼狽えることなく、迅速に無線を使って、救急車を手配した。
「こいつを撃った犯人が、まだ近くにいるはずだ。アルフレッド。お前、犯人を見たか?」
 フランシスの質問に、アルフレッドは、わん、と吠えた。勿論見たのだ。何か銀色の物で、女がイヴァンを攻撃したのを見た。そのせいでイヴァンは血を流し、倒れたのだ。銀色の物は、たぶん銃だ。
「見たらしい」とフランシスはアーサーに言った。
「その犯人を追えるか?」アーサーは、アルフレッドに聞いた。
 アルフレッドは、すくっと立ち上がって、また一度吠えた。
(勿論さ!)
「フランシス、こいつを頼む」アーサーはイヴァンを指して言った。「俺はアルフレッドと、撃った犯人を追う」
「ああ、わかった。気をつけろよ」
「わかってる」
 アルフレッドはアーサーと一緒に、女が逃げた方に向かって走った。女は走りにくいスカートを履いていた為に、遠くまで逃げ切ることが出来ず、アルフレッドとアーサーは、すぐに女に追いついた。
「おい、そこの女! 止まれ!」
「わん!」(止まるんだぞ!)
「嫌よおお! あたしを捕まえる気なんでしょ! そして、あたしを死刑にしてしまうつもりでしょ! だって人を一人殺してしまったんですものね! きゃは、きゃははははは! お生憎、あたしは死刑になんてならない。誰かに殺されるくらいなら自分で死ぬわよ!」
 女は持っている銃を自分の頭に突きつけた。
「あたしはあの子の所へ行くわ。死ぬのなんて怖くない。みなさん、さよなら!」
「やめろ!」
「わん!」(やめるんだぞ!)
 アルフレッドは女の自殺を止めたい一心で、女に飛びかかっていた。それがいけなかったのだ。
 女の目には、自分に向かって飛びかかってくる犬が、恐ろしい魔物に見えた。
「ひぃっ!」
 女はパニックを起こし、持っている銃を自分から、アルフレッドに標的を変えて、引き金を引いた。
 そして、二度の高い発砲音が天に轟いた。
 銃弾は、アルフレッドの首と、耳を貫通していた。
「アルフレッド――!?」
 アルフレッドは地面に倒れ、痛みに、のたうち回った。
 首と耳が、熱で焼かれているように痛い。
 女は今度こそ自殺を遂行しようと再び銃を自分の頭に当てた。アーサーはそれに気づくと、女を持っている銃で迷いなく撃った。銃弾は女の肩に辺り、女は「ぐあっ」と叫んで銃を取り落とした。アーサーは女の体に飛びかかり、押さえつけると、手錠と縄を使って、女の体を手際よく拘束した。
「アルフレッド! 大丈夫かー!?」アーサーは、暴れる女を押さえつけながらアルフレッドに向かって叫んだ。
 アルフレッドは体を震わせるばかりで声が出ない。
(ごめんよ、アーサー。俺……駄目かもしれないぞ……)
 空を見上げると、暗い夜空に星がたくさん出ていた。小さな針穴ぐらいの大きさの星々は、一つ一つが神秘的な輝きを放っている。
(この星の数だけ、今日、人や動物が死んだんだ。俺も死んだら、星になるのかな……)
 アルフレッドは静かに目を閉じた。


 朝から警察署の中は忙しかった。本田菊は、片耳の欠けた犬を連れて、署長室に入った。
「署長。連れてきましたよ」
「うむ、しかし気が重い。わしは一度この犬を見捨てている分際だ。今更仲良くしようと言ったところで、この犬がわしを好きになることはないかもしれない。だが、わしはそれでもいい。優秀な部下をわしの手元に置く事ほど幸福なものはない」
 署長は筒上に丸めた紙を広げて、中に書かれた文字を読み上げた。
「今日、五月二十四日より、名前、アルフレッドという犬を、我が署の、正式な警察犬と任命す。署長、ジミー・バーン」
「だそうですよ。アルフレッド」
 アルフレッドは誇らしげな顔をして、わん、と吠えた。


 アルフレッドは、あの日、女に撃たれた後、アーサーとフランシスのパトカーで、すぐに動物病院に連れて行かれた。その動物病院というのは、以前アルフレッドの命を救っていくれた獣医が居る病院で、獣医はアルフレッドを見て、とても驚いた。「君はまた大怪我をしたのかね」
 だが、いざ獣医が傷を開いてみると、傷は見た目ほど悪くなく、神経のどこも傷ついていなかった。
「幸運だった」
 アルフレッドは、二度もこの獣医に命を助けられた。
 麻酔から目を覚まして、すぐにアルフレッドは獣医にお礼を言った。彼に動物の言葉はわからないはずなのに、獣医は、うんうん、と優しく微笑んで頷いていた。

 それから、アルフレッドは犯人確保の功績を署長に認められ、警察署に引き取られた。アルフレッドが元気になったら、警察犬の一員として働ける事を約束された。それまで、犬小屋で菊やアーサー、フランシスの看病を受けながら、アルフレッドはリハビリを続けた。腹に重傷を負ったイヴァンも何とか一命を取り留め、元気になったという話だ。


 後に、アルフレッドという立派な警察犬は、沢山の功績を挙げた。多くの犯罪者を検挙するのに役立ち、そして、彼の愛らしい顔と、人なつっこい性格は、検挙された犯罪者の荒らんだ心を慰めたという。
 そして、今もアルフレッドは元気に仲間達と活躍している。


(完)

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プロフィール

HN:
capla
性別:
女性
自己紹介:
アメリカと呼ぶより、アルフレッドと呼ぶのが好き。
自分の書く作品が下手糞すぎて泣けてきまして、恥ずかしさから作品倉庫なる秘密基地を作成しました。ぱちぱち。ホームページは難しくて作れず、ブログです。しかし、ブログもなかなか難しい。半日も費やしてしまいました。(汗)

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